お金をつかうとき

彼と下北沢の展示へ行った。

“お金”に対する考え方やイメージのアップデートを提案する展示。コンセプトムービーを観て、分かるようで分からない問いかけにとても興味を惹かれた。
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展示は小さめのスペースで開催されていて、入った瞬間かわいいイラストのパネルに囲まれ、異空間に足を踏み入れたようだった。イラストの雰囲気から、“いま”ではなく“訪れるかもしれない未来”のことだと感じとれた。

この展示が開催されたきっかけは、2年前に展示した“Carbon Pay”。

「Carbon Pay」
未来の常識に対応する新しい習慣の1つで、自分のカーボンフットプリント量に相当する金額を、CO2を吸収する取り組みに送金できる仕組みの構想。

このアイデアに多くの関心が寄せられた一方で、「本当にこれでお金を払う人がいるのか?」という意見もあったそう。未来に必要な習慣を身につけるためには、お金に対する考え方やイメージをアップデートする必要があるのでは、そもそもお金とは何かを考え直す必要があるのでは、という問いからプロジェクトが発足。
議論を重ねるなかで、お金=価値を表す物や交換の手段、ではなく、“お金=未来を少しだけ変えるための道具”と捉えなおし、本展示を企画したという。


展示では、お金に対する考え方をスマホで診断できたり、擬似的な購入体験ができたりして、とても面白かった。診断後と購入体験後に提示される“お金に対する考え方のタイプ”を比べると、理想と実際の行動の結構違うもんだなと思ったり。

「街の小さなパン屋で毎日丁寧に焼き上げた食パン」や「大手製パン会社で味を追求して研究・開発された食パン」など、4つの食パンのなかから購入したい1つを選ぶ(QRコードを読み込む)

私の購入体験後のタイプは「進化の先導者」だった。

「進化の先導者」
社会と産業の変革を促し、大胆なイノベーションと共に新しい未来を切り開く人です。枠にとらわれない発想で、生活や思考を更新すことを恐れず、技術革新や新たなビジネスモデルを積極的に活用し展開することで、社会の進化を加速させます。

また、“もしかすると訪れるかもしれない、「進化の先導者」タイプなあなたの未来。”として、以下が記載されていた。

南暦2050年、あなたが住む街の景色は、変わらずここちのよいくらしが続いています。
けれど、変わったことも、たくさん。
例えば、旅行も「いまある場所・コンテンツへの移動」から、「いま未だ見ぬ世界・コンテンツへの“ダイブ”」が一部の人たちには人気のものへとなってきました。直接行けるところへは行き尽くした。そんなイノベーター精神の強い人たちにとって、最新機器を身に付けて視界、そして脳に直接未知なる世界へアクセスする”ダイブ体験”は、新しいビジネス発想にも役立っているそうです。

タイプは9つあるので、その全てにタイプの説明と未来のストーリーがあると思うと、運営の方々の創造性にただただ脱帽だった。さらに奥に進むと、(擬似的に)商品を購入したことによって訪れるかもしれない未来も掲示されていた。

ここまで、“訪れるかもしれない未来”が現実味を帯び、読み手がわくわくするのも、運営の方々の物語を紡ぐ力だよなぁと思った。まだ世の中に実装されていないことや所属の場所で前例がないことを実現するために必要な力のような気がした。


展示鑑賞(体験)後に感想を言い合っていると彼が「お金は物の対価というか、“消費するもの”っていうイメージしかなかったけど、“生み出すもの”って捉える切り口が面白かった」と言っていた。

私もいままでお金は“消費するもの”と捉えていた。スペースにいた運営の方は「子供のときから教育としてこの考え方を提示できたらいいんですけどね」と言っていて、たしかに私くらいの歳になってお金のイメージをアップデートするのはなかなか難しいよなぁと思った。
さいころに“教育”として提示しなければ、その後の購買行動は家庭での考え方によるところが多いだろう。実際、以前必ずオーガニックな食材を買う友達にそのわけを聞くと「実家がそうだったから」と言っていた。


私は展示を鑑賞(体験)しながら「お金を“未来を少しだけ変えるための道具”にできる(その選択肢を取れる)人がいれば、そうでない人もいるだろうな」と思った。未来を想像するよりもいま生きることを優先せざる得ない人もいるだろうなと。その辺りも彼と色々話し、
「お金を“未来を少しだけ変えるための道具”にできる人がそういう購買行動をすることで、世のなかが少しずつ良い方に変化して、できない人との格差が是正されていくのかもしれないね、それも含めた展示(お金に対する考え方のアップデートの提案)だったのかもね」
という結論に至った。

いま思えば、未来への投資的にお金をつかう!なんて大きなことではなく、いままで通りの購買行動でちょっと未来に思いを馳せてみて、ということだったのかもしれない。という気もするし、でも最終的には未来への投資にお金をつかうことを考えて展示していたんだっけ、と思ったり。

未来の私がお金を“未来を少しだけ変えるための道具”にできるかわからないが、自分のなかにいろんな捉え方を持てる人ではありたい。
次の買い物ではちょっと未来に思いを馳せてみようと思う。


(昨日中にブログをあげられなかった……くぅっ……)